エンジンは極低速のトルクが意外と細く、1000回転あたりでクラッチをつなぐとエンストしそうになる。発進時は2000回転くらいまで上げてやると出だしがスムースだ。クルマが動き出したらそのままアクセルを踏み込んでいくと、2500回転を超えたあたりからターボが効き始め、グッと背中を押されるような強いトルクが発生。ここから上の回転を保ってシフトアップしていくと、3速に入れる頃にはもう一般道の法定速度を超えてしまう。ボディーの軽さも相まって、この加速感は実に痛快。演出としても非常にわかりやすく、短時間の試乗でもすぐに面白さを感じられるはずだ。
小排気量エンジンながらサウンドも低音が効いたそそる音色。ロードスターとはまた違った感じだが、ラテン系のエンジンを回しているというだけでも気分が盛り上がる。
試乗車は6速マニュアルシフト仕様でシフトの入りは若干固め。ロードスターの時のような吸い込まれるような感じはなく、トヨタ・86に近いフィーリング。しかし、これはまだオドメーターが1000キロにも達していない慣らし運転期間ということもあるので、距離を重ねることでスムースになるのだろう。思えば86の試乗車もおろしたてだったっけ。そうやって走らせてドライバーとクルマが少しずつお互いに馴染んでいく楽しみは、新車オーナーの特権である。
ハンドリングはロードスター譲りで、後輪を軸にコンパスのごとく旋回していく独特の感覚は、低速で交差点を曲がるだけでも頬が緩んでくる。鼻先が内側に入り込んでいく感触がとてもわかりやすく、意のままに向きを変えられる。曲がれば曲がるほどに運転が楽しくなり、意味もなく角を曲がってみたくなってしまう。
キャビンからは左右フェンダーのふくらみが見え、ロングノーズながら車両感覚はつかみやすい。一方、後ろも畳んだ幌屋根とトランクがあるだけでごく短いし、オープン時は遮るものがなく視界が抜群にいいから、目視だけで楽に車庫入れできてしまう。なので、クルマを停めてから屋根を閉めるのが正しい使い方、と断言してしまおう。逆に荒天で屋根を閉めている時の後方視界は良くないが、バックカメラが装備されているので、ミラー、目視と併用すれば、そもそも全長がほぼ4メートルとコンパクトな車体で取り回しがいいから、それほど心配はいらない。