【試乗インプレ】世界が認めた名車の異母兄弟 アバルト・124スパイダー(前編) (2/5ページ)

  • 琵琶湖東岸の街、長浜の黒壁スクエアにて。渋い日本家屋と派手なイタ車のコントラストも乙なもの。アバルト・124スパイダー
  • ロードスターとの最大の違いは、このイタリア産エンジン。小排気量ながらターボ付きでホットな出力特性。アバルト・124スパイダー
  • 内装はロードスターとの差が少ないが、よく見ると…アバルト・124スパイダー
  • 黒壁スクエアの中心部にある洒落た洋館「黒壁ガラス館」前にて。アバルト・124スパイダー
  • アバルト・124スパイダー
  • アバルト・124スパイダー
  • 往年のラリー仕様車にならって、ソリッドな赤と日光の反射を抑え防眩効果のあるマットな黒のツートンに塗り分けられた「ヘリテージルック」。アバルト・124スパイダー
  • ベースになったマツダ・ロードスターは女性的なボディーラインだが、こちらは運動性能の高さをアピールするかのようにマッシブなデザイン。アバルト・124スパイダー
  • 真横からの眺めでもロードスターとはだいぶ印象が異なる。アバルト・124スパイダー
  • トランクリッドもつや消し黒で後ろ姿も精悍。アバルト・124スパイダー
  • 4本出しマフラーが迫力満点。3リッター6気筒くらい積んでいそうな風情。アバルト・124スパイダー
  • 前後輪ともに205/45R17とロードスターより一回り太いタイヤと大きなホイール。赤く塗られたブレーキキャリパーはブレンボ製。アバルト・124スパイダー
  • アバルト・124スパイダー
  • 琵琶湖周辺はあいにくの霧模様。湖越しの西岸の山並みを背景に…という目論見はあえなく頓挫。アバルト・124スパイダー


 エンジンは極低速のトルクが意外と細く、1000回転あたりでクラッチをつなぐとエンストしそうになる。発進時は2000回転くらいまで上げてやると出だしがスムースだ。クルマが動き出したらそのままアクセルを踏み込んでいくと、2500回転を超えたあたりからターボが効き始め、グッと背中を押されるような強いトルクが発生。ここから上の回転を保ってシフトアップしていくと、3速に入れる頃にはもう一般道の法定速度を超えてしまう。ボディーの軽さも相まって、この加速感は実に痛快。演出としても非常にわかりやすく、短時間の試乗でもすぐに面白さを感じられるはずだ。

 小排気量エンジンながらサウンドも低音が効いたそそる音色。ロードスターとはまた違った感じだが、ラテン系のエンジンを回しているというだけでも気分が盛り上がる。

 試乗車は6速マニュアルシフト仕様でシフトの入りは若干固め。ロードスターの時のような吸い込まれるような感じはなく、トヨタ・86に近いフィーリング。しかし、これはまだオドメーターが1000キロにも達していない慣らし運転期間ということもあるので、距離を重ねることでスムースになるのだろう。思えば86の試乗車もおろしたてだったっけ。そうやって走らせてドライバーとクルマが少しずつお互いに馴染んでいく楽しみは、新車オーナーの特権である。

 ハンドリングはロードスター譲りで、後輪を軸にコンパスのごとく旋回していく独特の感覚は、低速で交差点を曲がるだけでも頬が緩んでくる。鼻先が内側に入り込んでいく感触がとてもわかりやすく、意のままに向きを変えられる。曲がれば曲がるほどに運転が楽しくなり、意味もなく角を曲がってみたくなってしまう。

 キャビンからは左右フェンダーのふくらみが見え、ロングノーズながら車両感覚はつかみやすい。一方、後ろも畳んだ幌屋根とトランクがあるだけでごく短いし、オープン時は遮るものがなく視界が抜群にいいから、目視だけで楽に車庫入れできてしまう。なので、クルマを停めてから屋根を閉めるのが正しい使い方、と断言してしまおう。逆に荒天で屋根を閉めている時の後方視界は良くないが、バックカメラが装備されているので、ミラー、目視と併用すれば、そもそも全長がほぼ4メートルとコンパクトな車体で取り回しがいいから、それほど心配はいらない。

追い越し加速に余裕あり 直進安定性高し