第一印象として、まずハッチバックであることはすぐわかる。しかし同時に、いわゆるハッチバック車とはどこか違う雰囲気も感じる。全体のシルエットとしてはミニバン的でもあるのだが、立体駐車場にも入る153センチの全高がその印象を否定する。
画像で見るとどんなクルマかわかりにくいと思うのだが、実は肉眼で見てもちょっと混乱する。かつて私がモーターショーで展示されていたDS5を初めて目にしたとき口をついて出た一言が「何だこのクルマは」だったが、その印象は丸一日試乗した今も変わっていない。
人は何かを初めて見る時、今まで自分が見てきたものの中からそれに似たものを思い出し、同種として分類・整理しようとする。これはごく自然な脳の働きなわけだが、似たものが見つからないとうまく分類できずに混乱する。
説明が長くなったが、DS5はそういう形、つまり他に似たクルマのない造形をしている。だからずっと気になって頭の隅に残る。この感覚を邪魔くさいと思うか、面白いと感じてじわじわ好きになるかは個人差があるだろうが、好き嫌いがハッキリ分かれるクルマであることは間違いない。私の場合はずっと気になって一度乗ってみたいと思っていたので当然「かなり好き」である。
効率を捨てデザインに走る 2ボックスなのに
ディテールに目を移す。要所要所に使われたシルバーの加飾が嫌味なくプレミアム感を高めている。特にボンネット両サイドからAピラー下部まで大胆に伸びる「サーベルライン」と名付けられたパーツがアクセントとなり、フロントを引き締めている。
サイドのプレスラインは、後席ドアハンドルの後ろでえぐれるように蹴り上がっている。おなじような「えぐれ」はリアコンビランプ下部にも見られ、デザイン上の特徴になっている。
リアハッチのヒンジはリアガラス上端ではなく、ガラスルーフにまで食い込み、後席ヘッドレストの上あたりに設置されている。おそらくは高くしたバンパー上端に合わせて開口面積を十分に確保するためのデザインだと思うが、効率を捨ててデザインに走るこういった作りも普通のハッチバックとは異なる。
外観全体としては「貧乏臭さ」を感じさせず、プレミアムと呼ぶにふさわしいハッチバックを作るというDS=シトロエンの強い意志が感じられる。