試乗車に搭載する「T5」エンジンは最高出力254PS/5500rpm、最大トルク35.7kgm/1500~4800rpmという性能を誇り、走り出しから中速度域にかけて1870キロの車重を全く感じさせない広いトルクバンドと加速力を発揮する。
乗り心地は非常にしなやか。新開発の専用サスペンションは前輪にダブルウィッシュボーンを採用しており、タイヤサイズは235/50R19という設定だ。クロカン仕様ということもあり、ノーマルのV90より足回りを軟らかく仕上げているのは間違いない。走行中は凹凸やざらつき、突き上げといった路面からの不快な入力を巧みにいなすなど、車内空間の静謐をしっかり保ちながら気持ちよく走る。
つかみやすいサイズ感
V90は最低地上高を210ミリに設定しているが、全高を1545ミリに抑えていることもあり、驚くほどアイポイントが高いというわけではない。全長4940ミリでボンネットはかなり長いが、前方の距離感は意外にも把握しやすい。V60を試乗したときは助手席側のワイパーが常に視界に入るのが気になったが、V90はすっきりと格納されている。
高速道でアクセルを踏み込むと、一気に6500回転まで吹け上がる。クロカン仕様の大型エステートに乗っていることを忘れてしまうほどの、瞬発的なパワーとスピード。ペダルの踏み込みに合わせて軽快に音階を駆け上がるエンジン音がけっこう刺激的で、乗り始めに感じた存在感の大きさも、乗っているうちに「あえて音を聞かせているのだろうな」と感ずるに至った。もしかしたら音を少しばかり作り込んでいるのだろうか。とても心地の良いサウンドだ。しかもロードノイズや風切り音はほぼ完ぺきに抑え込んでいる。エンジン音だけをBGMにして走れるなんてなかなか贅沢だ。