ブリティッシュグリーン、イタリアンレッド、フレンチブルーなど、国を象徴する色でレース車両を塗装する「ナショナルカラー」は国際レース発祥である。
屋根の形状と名称に馬車の名残
黎明期の自動車には屋根なしのものが多い。つまり自動車は最初オープンカーだった。FR駆動のボンネット型が主流になってもしばらくは幌屋根である。また、開閉可能な幌屋根を「カブリオレ」、2人乗りを「クーペ」と呼ぶがこれらはすべて馬車に由来する。
最近はあまり聞かなくなったが、「ハードトップ」というスタイルがある。初めて聞いた時は、「屋根が固いのなんか当たり前じゃないか」と思ったものだが、これも初期の幌屋根(=ソフトトップ)が金属製の屋根(=ハードトップ)に進化したことから対義的に生じた呼称。馬車の幌屋根を知らない現代人がピンと来ないのも無理はない。
ボディーを作っていたのは自動車メーカーにあらず
現代の乗用車はほとんどがシャシーとボディーが一体となったモノコック構造になっているが、1950年代あたりまではシャシーとボディーは別構造だった。自動車メーカーが作っていたのはエンジン、パワートレイン、サスペンションなどを載せたシャシー部分だけで、その上に架装するボディー内外装はコーチビルダーと呼ばれる専門メーカーに委託していたのである。
コーチビルダーの「コーチ」というのは馬車の一形態で、つまりは自動車の発明以前から馬車を作っていた製造業者が、馬車から自動車の時代に変わった後もそのノウハウを応用し、ボディーメーカーとして業態を変化させたというわけ。
1950年代以降、ボディーのモノコック化が進むと需要が縮小、コーチビルダーは自動車メーカーに吸収されるなどして衰退していった。
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他にも流線形の話など興味深いトピックはいろいろあったが、涙を飲んで割愛。今回取り上げたそれぞれのトピックも、だいぶ端折った内容になっている。本文で書ききれず、画像のキャプションで補ったところもあるので、そちらにも目を通していただければと思う。興味が湧いたら、実際に博物館を訪れることを強くおすすめする。クルマ好きだけでなく、近現代史に興味がある方にもサイドストーリー的に楽しんでいただけること請け合い。
さて、前編はここまで。あす11日掲載予定の後編では1950年代から2000年代までを取り上げる。前編では少なかった国産車の展示も多く、読者の皆さんにも馴染み深い懐かしいクルマが多数登場する。どうぞお楽しみに。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
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博物館では現在、通常の展示に加えて、親子で楽しめる「ト博夏フェス!2017」を開催中(10月9日まで)。「企画展 再発見!はたらく自動車 ―タクシーの世界―」のほか、土日には屋外で消防車やキャリアカーの実演なども予定されている。
所在地 愛知県長久手市横道41-100
開館時間 9:30~17:00(入館受付は16:30まで)
入館料 大人1000円、中高生600円、小学生400円、未就学児無料、65歳以上500円
※団体や学校行事、会員証提示の場合は割引料金あり。詳しくはこちらを参照。
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
見学・問合せ専用電話番号 0561-63-5155