シフトレバー手前にシリアルナンバーのバッヂがついていたり、シートや、前席ドア内張り・アームレストに高級素材のアルカンターラが使われていたり、シフトノブがアルミの削り出しだったり、とむしろスポーティーな方向で特別感を演出している。
標準車と最も異なるのはシート形状だ。サーキット走行も想定した4点式シートベルトに対応したフルバケットシートで、わき腹や腿をサポートする部分の張り出しが大きく、ハイスピードでカーブを曲がった際に横Gがかかっても、姿勢を崩すことなく、安定して運転操作を続けられる。
体全体が包み込まれるやや硬めの座り心地は、シートポジションを合わせてしまえば快適そのもので、サーキット走行だけでなく、長距離ツーリングでの運転疲れ軽減にも効果が高い。
しかしながら、座面両側の張り出しが高く、乗り込む時にいちいち腿裏に当たって乗降性がいいとは言えない。オーナーは自分のクルマだからいいとしても、普通のゲストが助手席に乗る場合は煩わしく感じるだろう。
後席はセンターアームレストが省略されている以外は通常のハッチバックモデルと同じで、6:4の分割可倒式背もたれ、秀逸アイデアの横断幕式の巻取りトノカバーなど、使い勝手も変わらない。
普段使いできる乗り心地と扱いやすさ
スロットルレスポンスやステアフィール、ダンパーの減衰力を調節するドライブモードは3つから選べる。始動時は真ん中のややスポーティーな「Sモード」で、穏やかな特性の「コンフォート」はゴーストップが多く低速走行の多い市街地に、スポーツ走行に特化した「+R」はサーキットのほか、勾配やカーブが連続する山坂道に適している。
まずは、埼玉県南部からコンフォートモードで東名高速用賀インターまで、山手通り→早稲田通り→中野通り→環七→玉川通り、と一般道を走ってみる。結論から言うと、2人乗りなら普段使いできる。
30という低扁平タイヤが影響した多めのロードノイズを除けば、乗り心地も硬めながら乗用車として許容範囲内にある。
ただし後席に関しては、前席よりロードノイズは多めで、後輪からの突き上げも強く感じられるから、長距離ドライブでは疲れてしまうかもしれない。
3.5リッター自然吸気エンジン並みの大トルクを生かし低回転を維持したエコランなら、エンジンサウンドも騒がしくなく、ターボが効き始める2500回転以下でシフトアップすれば、エンジン回転の上昇も穏やかで、とても運転しやすい。
もちろん、必要に応じてアクセルを踏み込めば、ターボ過給を効かせて加速してくれるから、コンフォートモードのままであってもスポーツモデルらしさも味わえる。