TPP重要5分野、影響試算、情報開示……窮屈な日程で論点多岐
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案が5日、衆院本会議で審議入りし、協定発効に向けた国内手続きが本格化する。日本と米国の承認がTPP実現の最低条件となるだけに、政府・与党は今国会で法案を成立させ、早期発効へ弾みをつけたい考えだ。ただ、審議の論点は多岐にわたり、大型連休などを挟む審議日程に余裕はない。農家のTPPへの懸念も根強く、丁寧な審議を行えるかが課題となる。
「国会で十分審議がいただけるよう、政府として丁寧に説明していかなければならない」。石原伸晃TPP担当相は5日の閣議後会見でこう強調した。その上で「わが国が率先して動き、TPP全体の早期発効に向けた機運を高めていくことが重要だ」と意気込んだ。
ただ、会期中は大型連休に加え、5月26、27日には主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が控えており、審議時間はかなり絞られる。TPPを参院選の争点にしたくない与党は、5月下旬までに参院での法案承認を目指す構えだが、民進党など野党は「こんな窮屈な日程で十分な審議が行えるわけがない」(野党幹部)と批判を強めている。
TPPはカバーする範囲が広く論点は多岐にわたっており、野党は幅広い問題点に焦点を当て、攻勢を強める方針を示す。コメなど重要農産品5分野のうち約3割が関税撤廃されるため、5分野を関税撤廃の例外とするよう求めた国会決議との整合性については特に追及を強める姿勢だ。これに対し与党は「国家貿易制度は維持され、国内の農業対策で生産性は維持される」と主張する。
野党はこのほか、国内対策の効果を前提としたTPPによる経済効果の試算や、海外農産品の輸入拡大による食の安全性確保など多くの疑問点を投げかける構えだ。
与党は「心配ごとを言い出したらきりがない。論点は整理すべきだ」(政府関係者)と野党側にくぎをさす。今後はTPP大筋合意後の精力的な国民への説明会の実施や合意内容の情報開示、補正予算による国内対策などの成果を強調し、理解を求める考えだ。
TPP発効は、署名後2年以内に参加全12カ国が国内承認を終えれば、その60日後に発効する。2年後以降でも、域内国内総生産(GDP)の85%を占める6カ国以上の承認で発効できるが、日本と米国のどちらが欠けても、この条件は満たさない仕組みとなっている。
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