安倍首相、G7首脳を見事にまとめ上げる 増税勢力抑え込みに布石
伊勢志摩サミット安倍晋三首相は26日夕、伊勢志摩サミットの主要議題となった世界経済に関し、この日の討議の“成果”として、G7が世界経済が大きな「危機」に瀕しているとの認識で一致したことを記者団に披露した。
安倍首相は討議で世界経済は平成20年のリーマン・ショック前の状況に似ており、「危機」に陥るリスクがあると表明。すでに安倍首相は29年4月に予定していた消費税10%への引き上げを先送りする方針を固めているが、その条件にしてきた「リーマン・ショック級の事態」をめぐり、「危機」という強い言葉で世界経済に対する厳しい認識を示してG7首脳をまとめ上げた。予定通りの増税を主張する勢力を押さえ込み、消費増税再延期に向け、また一つ布石を打った形だ。
「世界経済は今まさに分岐点にあり、政策的対応を誤ると、危機に陥るリスクがある」。26日の討議で安倍首相は各国首脳を前に危機感を隠さず、G7の連携を強く訴えた。
これに財政規律を重視するキャメロン英首相が「そうした状況にはないのではないか」と発言。安倍首相は「大きなリスクに直面している」とややトーンを下げ、ほとんどの首脳が「(世界経済は)非常に厳しい」「リーマン・ショック時の対応は問題があった」などと安倍首相に同調した。
日本は26年の消費税率8%への引き上げ以降、個人消費の回復が遅れ、さらに新興国経済の減速でデフレ脱却を目指す「アベノミクス」は正念場を迎えている。世界経済の先行きが危ぶまれる状況で日本が消費税再増税を強行すれば、景気は落ち込み、新たなリスク要因となりかねない。この日の討議では、各国が需要喚起に向けた財政出動の重要性でも一致した。
ただ、安倍首相は26年11月に再増税を1年半延期して衆院を解散した際に「再延期はない」と断言している。夏の参院選に向け政権批判を強めている野党は早速、安倍首相の「危機」発言を「何をもって言っているのか理解に苦しむ」(民進党の岡田克也代表)などと批判している。
再び延期することで、安倍首相は過去の発言との整合性を問われるとともに、社会保障費の財源確保や、安倍政権が同時に進める財政健全化などの課題も抱え込むことになる。
安倍首相は、熊本地震の復旧に向けた28年度補正予算に加え、今後、景気を押し上げるため景気対策を盛り込んだ新たな補正予算案の策定などに取り組む構えだ。
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