企業は規模拡大に期待 経済対策素案、政府は健全化との両立で腐心

 

 政府が策定中の経済対策について、経済界や与党などから規模拡大を求める声が上がっている。政府は事業費を20兆円規模とする一方、“真水”と呼ばれる国と地方自治体の財政支出を3兆円超にとどめ、赤字国債の発行を見送る方向で検討してきた。ただ、支出がさらに膨らむ可能性が高まっており、政府は財政健全化との両立に腐心している。(田村龍彦)

 「直近の需要喚起策と第4次産業革命で、日本経済を成長軌道に乗せることが必要。経済対策では重点的な国費投入を求めたい」

 経団連の榊原定征会長は26日に官邸で開かれた経済財政諮問会議に出席後、記者団にこう強調した。榊原氏はかねてから「大胆で大規模な国費投入」を訴えてきた。

 企業トップの間にも「経済回復に向け、大規模対策をやるべきだ」(JXホールディングスの木村康会長)との声は少なくない。

 政府はこの日、与党にも経済対策の素案を説明。事業規模などは示さなかったが、自民党の会議では出席者から国の支出の積み増しを求める声が上がった。公明党議員からもプレミアム商品券の発行など消費喚起策を盛り込むよう求める意見が相次いだ。

 対策の策定にあたり、安倍晋三首相は「平成32年度の財政健全化目標は堅持する」と表明。政府は国と地方の追加支出を3兆円超とする一方、国の信用で借りた資金を貸し出す財政投融資や民間支出などを積み増すことで事業規模を膨らませる方向で検討してきた。

 追加支出の財源は、公共事業に使途が限られる建設国債を1兆円超発行して、残りを昨年度の剰余金や今年度の国債利払い費減少分などで賄う見通しだった。 消費税増税を再延期する中、赤字国債を発行して対策の財源にすれば財政健全化が遠のきかねない。財政投融資なら財政の健全性を示す基礎的財政収支に影響しないメリットがある。

 ただ、経済対策には消費税率10%への引き上げ時に予定していた年金受給資格期間の短縮や、保育士や介護人材の待遇改善などを盛り込む。政府は対策を28年度第2次補正予算案と29年度予算案に反映させる方針だが、年金や待遇改善の予算は一度きりで打ち切るのは難しく恒常的にかかるため、30年度以降も歳出増としてのしかかる。

 財政投融資も政府が国債の一種である財投債を発行して資金を調達する必要があり、借り換え時に金利が上昇していた場合、損失が出じる恐れがある。

 政府は、これまでも景気刺激のための経済対策を講じてきたが、規模が大きくなればなるほど「需要の先食いやその後の反動減も大きい」(財務省幹部)との見方は根強い。

 経済界でも、経済同友会の小林喜光代表幹事は26日の記者会見で、経済対策について、小中学生を対象にした朝食支援事業などを提案するとともに「将来世代の負担となる財政支出は最小限にし、若者が希望の持てる施策にすべきだ」とクギを刺した。