GDP算出めぐり日銀と内閣府が“論争” 「一つの問題提起」と評価の声も

 
25日に開かれた総務省の統計委員会の会合。GDPの算出をめぐり、日銀と内閣府の間の見解の隔たりは小さくないようだ=東京・霞が関(藤原章裕撮影)

 国内総生産(GDP)の算出をめぐり、日銀と内閣府の間で論争が勃発している。企業の申告所得や雇用者への給与総額といった税務データに基づき、日銀がGDPを試算したところ、過去10年ほどの実質成長率は平均1.2%と内閣府の公表値(0.6%)の2倍に膨らんだからだ。専門家は「信憑性は不明だが、面白い試み」と評価している。

 日銀は7月中旬、100ページ弱に及ぶ論文をホームページ(HP)上で公表。特に関心を集めたのが、消費税率が5%から8%に引き上げられた平成26年度の試算だ。名目GDPの実額は519兆円と内閣府の公表値(490兆円)より約30兆円も多かった。成長率も内閣府はマイナス0.9%と算出しているが、日銀はプラス2.4%と百八十度異なる。

 内閣府は国連が定めた基準に基づき、主に個人消費や設備投資などの統計項目を積み上げる形でGDPを算出している。26年度は増税前の駆け込み需要の反動が出て消費は低迷したが、「GDPの落ち込みが大きすぎるのではないか」(エコノミスト)との見方は多かった。

 日銀内でも「企業収益が伸びたにもかかわらず、GDPがこれほど下がるだろうか」と疑問視する声が続出。住民税や法人税などの税務データを基に独自推計することにした。日銀は「企業が脱税しない限り、ほとんどの経済活動を捕捉できる」(幹部)と主張する。

 実は、日銀と内閣府はこの論文をめぐって1年以上前から水面下でやり取りしたが、内閣府は「日銀が使う一部データはサンプル調査」(幹部)などと問題点を指摘し、公表に難色を示した。

 また、税務情報がすべて公表されるのは年度が終わってから1年3カ月後。速報性が求められる中、それまでGDPを算出できないのも弱点だ。

 日銀の論文は「公式見解」ではなく、担当職員2人の「ワーキングペーパー」との位置づけだが、当然、上層部はHPでの公開を了承している。

 みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「日銀としては(内閣府のGDP算出に)金融政策の効果がきちんと反映されていないとの不満があったのだろう」と分析した上で、設備投資についても「一部の無形資産やM&A(企業の合併・買収)費用が含まれないなど実体から懸け離れている」と指摘。時代にそぐわなくなってきたGDPの改善に向けて、「日銀版GDPは一つの問題提起」と評価した。

 GDP算出の改善をめぐっては総務省の統計委員会で議論され、日銀版GDPも7月の会合で示された。

 25日の会合では、国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」について、GDPへの反映を目指した修正案を担当者が説明。公表時期を前倒しする考えだが、GDP改定値の集計に間に合わないタイミングのため、有識者からは「努力してほしい」と注文がついた。(藤原章裕、山口暢彦)