暴徒化したデモ隊に襲撃され略奪を受けた日系スーパー。中国リスクの先行きが懸念されている=中国山東省青島(共同)【拡大】
【西論】編集委員・安本寿久
15年ほど前のことになるが、中国東北部の瀋陽を訪れた。戦前は奉天と言われていた街で、日露戦争では最後の決戦、奉天会戦が行われた地である。戦場跡などの取材を終えた後、通訳の中国人が言い出した。「満鉄の遺産がある。見ていかないか」
満鉄とは南満州鉄道。日露戦争に勝ってロシアから鉄道敷設権と経営権を譲り受け、日本が満州経営の中核とした特殊会社である。あじあ号という当時、世界最高速度を誇る国際列車を運行していたことでも知られていた。
行き先は鉄道博物館だという。面白そうだと思って同意したが、行ってみて後悔した。まず、看板からして異様だった。博物館の名の横にこう書いてあるのだ。
〈愛国教育基地〉
入ってすぐ、その意味がわかった。展示品の大半は、1945年以前の中国を走っていた欧米列強の列車で、すべてが屋外に置かれ、風雨にさらされて朽ちるに任せた状態だった。それで「展示」となっているのは、こんな説明文がついているからである。
〈過去に国力が弱かった時代には、外国の列車がわが物顔で国内を走っていた。再びそうした時代を迎えないために、当時の列車を展示する〉