オリジナル乳製品の販売を手掛ける「磯沼ミルクファーム」の磯沼正徳さん=東京都八王子市【拡大】
都市近郊の酪農家を悩ませるのは割高な経営コストだ。狭小な放牧地は牧草が少なく、エサの購入量を増やさざるを得ないほか、機械化による経営合理化も困難だ。
また、牧場と住宅地が近いため、においや衛生に対する管理費もかさみ、「価格競争面で不利な条件を強いられる」(農水省畜産部)という。
それでも、消費地との距離の近さは大きなメリットになる。磯沼さんは、オリジナル乳製品の販売とあわせ、市街地との好アクセスを武器に、消費者が気軽に牧場体験を楽しめるサービスを提供。訪れた観光客の反応を収集し、きめ細かなマーケティングにつなげている。
加えて、都市圏は他産業との接触機会も多く、コーヒー業者から廃棄物のコーヒーのかすを安値で買い受け、牛舎の防臭に活用するつながりも生まれた。
牛舎にまかれたコーヒーかすは牛糞などとまざって、高品質の堆肥になり、新たな販売品目となっている。