就任早々、量的緩和を強化するとみられる黒田東彦日銀総裁。「リフレ派」の手腕に注目が集まる=11日午前、国会・参院第1委員会室【拡大】
「うちの大臣(麻生太郎財務相)と首相の盟友関係を考えれば今回こそ…」
こうすがる財務省幹部に、首相側近はぎこちない笑みを向けるしかなかった。首相の意中の人物が読めない霞が関は、疑心暗鬼に陥った。岩田一政日本経済研究センター理事長、岩田規久男学習院大教授、竹中平蔵慶応大教授…。次期日銀正副総裁選びは雨夜の品定めの様相を呈した。首相は霞が関の警戒や心配をよそに、人事案の構想を練り続けた。
麻生氏「学者は駄目」
これまで日銀総裁に就いた財務省OBは全員が旧大蔵事務次官経験者。黒田氏のような財務官経験者の起用は前例がない。国際金融を総括する財務官は事務次官に次ぐ官職だが、省内の主流は予算編成を担う主計畑である。
「主計官僚はミクロ的発想だが、金融政策は典型的なマクロ政策。考え方が違う」
首相周辺の一人は、首相の狙いをこう指摘した。
1月15日、首相は官邸に金融分野の専門家を呼び、約1時間半に渡って助言に耳を傾けた。メンバーは岩田規久男学習院大教授、中原伸之元日銀審議委員、伊藤元重東大大学院教授ら7人。それぞれが日本経済の現状認識やデフレ脱却策を披露した。