アフリカ・モロッコで栽培された唐辛子=2011年9月(小林桂の常深克典さん提供)【拡大】
「閉ざされたドアの向こうに新しい何かが待っていて『きっときっと』って僕を動かしている」
「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな」
そんなフレーズが自身の立場に似ている気がしたからだ。経由地を経て約22時間、常深は「きっと壁は超えられる」と頭の中で繰り返していた。
だが、やはり何度も壁にぶつかった。ひとつは言葉の壁。常深も英語はできるが、現地の農家で使われていたのはフランス語とアラビア語。意図が十分に伝わらないこともあった。それ以上の壁は、農業の専門用語の知識が十分ではなかったことだった。
「分かったと言ってくれても本当に分かっているのか…。農業の常識を知らないから、不安は二重三重になって襲ってきた」
帰国後、常深は茨城県内の唐辛子農家を訪れた。モロッコでの栽培方法が正しいのかをチェックするためだったが、農場をみて愕然(がくぜん)とする。
雑草が生え放題だったモロッコに比べ、茨城の農場は整然ときれいだった。葉の付き方も、畝の作り方も、土の質も…。何もかもが違った。同じ唐辛子の畑とは思えなかった。