広大な岩木農場を巡回する黄金崎農場の佐々木君夫社長=6月中旬、青森県弘前市【拡大】
金利負担などをてんびんにかけ、ためらいもしたが、大きなチャンスととらえて購入を決断した。「契約栽培主体の経営には限界がある。これに対し、岩木山周辺には70万人という大きな消費市場があり、農場から消費者に作物を直接供給する仕組みを作ることができれば、新たな可能性が広がる」(佐々木)と考えたのだ。320ヘクタールもの岩木農場が加わり、黄金崎農場の耕作面積は日本一になった。
しかし、この投資は結果的に裏目に出て、経営を圧迫した。2000年、当時農場の主力作物だったダイコンの相場が暴落。低価格の中国産が流入し、漬物メーカーが一斉に中国産に切り替えたためだ。黄金崎農場のダイコンの売り上げは前年の2億円から3000万円に激減した。
これを機に農場の経営は一気に悪化。5億円余りを借り入れていた農林漁業金融公庫からの返済圧力も強まった。佐々木らは「清算しかない」と覚悟を決めた。しかし、公庫は意外にも5年をかけて再建計画をまとめるよう求めてきた。