長引くデフレの下で低価格志向に偏っていた消費者の動向に、変化が生まれ始めた。高級腕時計や宝飾品だけでなく、これまで苦戦を強いられてきたテレビや白物家電、パソコンといった耐久消費財の需要が高まりつつあるほか、セール品以外の衣料品も売れている。一方で、スーパーなどは値下げの動きが進むなど、全面的な物価反転にはいたっていないのが現状だ。
「こういうのを見ると、欲しくなるよね」。ビックカメラ有楽町店(東京都千代田区)2階のテレビ売り場で、フルハイビジョンの約4倍の画素数を持つ「4Kテレビ」を眺めていた品川区の男性(63)がため息をもらす。55インチで約50万円と通常の商品よりも割高だが、登場し始めたころの薄型テレビを購入した経験を持つこの男性は「この性能で以前と同じ価格なら、安いよ」と言い切る。
調査会社のBCNによると、6月のテレビの平均販売価格は5万7500円と3カ月連続で上昇。地上デジタル放送移行後は、特需の反動で不振にあえいできたテレビだが、40型以上の構成比率が初めて30%を超えるなど「大型テレビが好調」(BCN)で、ビックカメラでも液晶テレビの販売単価は前年の同時期に比べ30%増で推移する。