つまり異分子とは「平均値ではない」と同義だ。これで平均値のスペックでシンプルなミニマルスタイルが成立という「引き算の美学のナゾ」が見えてくる。
デザイナーも引き算の美学の深淵を極めるなんて哲学的なことを言って泥沼にはまっていないで、足し算の美学を学習するのも大切なんじゃないか。前回紹介したイタリアのファッションメーカー、ジョン・リッチモンドのデザイナーとして活躍する村田晴信さんが、ミニマリズムから装飾の美へ転換したプロセスは、まさにこの例にあてはまる。
実は足し算や掛け算が、日本料理の強みだとも松嶋さんは指摘するのだ。
「和食の特徴はうまみだという意見もありますが、うまみを分かっている人なんてどれだけいるのでしょうね。(大衆も食を楽しむようになった)飽食の時代以降の和食は、食材の組み合わせの多様性に強みがあると思います」
ダイバーシティという言葉が流行っている。しかし僕の目には「平均的なダイバーシティ」モデルを描こうとしているようにしかみえない。
もう一度、平均の意味から考え直してみたらどうだろう。
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ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih