金融資産は回復しても実体経済は細る日本(グラフ上)、フローとストックが連環する米国(グラフ下)【拡大】
生産はすなわち所得、それが減り続けながらも金融資産が増える。金融資産が金利や株価上昇によって自己増殖しているからではない。日本の家計金融資産の54%(2012年現在)は現預金であり、金利はゼロ近辺、しかも株価は低迷。家計は実物にカネを使わず、現預金というストックに回している。預金を集める銀行は一般融資を減らし、国債で運用してきた。株価も不振だから、企業はストック市場から資金調達して設備投資に回すこともない。それどころか、企業自身、現預金を積み上げるだけである。
このグラフが明示しているのは、ストック部門で貯まっては凍りついたように積み上がるマネーであり、それが実物のフロー経済に流れていかない。あたかも大河の水が崖を流れ落ちるとたん、巨大な氷柱となる厳冬期のナイアガラ瀑布のようになる。それが日本特有の慢性デフレである。
下のグラフは米国のケースで、日本と大きく異なるのは米国マネー経済は決して厳冬のナイアガラではない点である。家計金融資産、GDPともリーマン・ショック直後は急減したが、ほぼ一貫して寄り添うように上昇軌道を描いている。米国では金融のストックと実体経済のフローはみごとに連動している。