中央大学富田俊基教授【拡大】
現在、国の予算は半分しか税でまかなえていない。今回の税制改正では、この現実を忘れたかのような議論が目についたことが残念だ。税制改正で求めるべきは、国民が不安に思う社会保障制度の持続可能性を高める財源を調達する、という本来の基本的な機能を発揮することだったはずだ。
景気は拡大局面にある。それに伴って発生した税収の自然増を、政府は法人関連の減税や補正予算で使おうとしている。だが、景気が後退する局面ではどうするのか。個々の家計や企業は、アリのような勤勉さで将来に備えようとしているが、その集合体である国は、生産年齢人口である働き手が今後も減少を続けていくにもかかわらず、キリギリスのように後先を考えていないままだ。景気は循環するもので、拡大局面で財政健全化を進めないと、これまでと同様に財政健全化の先送りを繰り返しかねない。
税は簡素、中立、公平が原則だ。法人税率を下げるのであれば、これまでの特別措置を整理しなければならない。だが、今回の改正では新たな特別の措置が取り入れられ、簡素化にも逆行している。
軽減税率は零細企業や農家からの仕入れが、税額控除されなくなるという事務処理上の問題を引き起こす恐れがあり、今回の持ち越しは評価する。(談)