政府税制調査会の中里実会長(東大教授)が28日までに産経新聞の取材に応じた。政府税調は2月の総会で、国際的に高い法人実効税率の見直し議論を再開する予定だが、中里氏は「法人実効税率の引き下げだけで世の中すべてがバラ色になるわけでない。他の税との組み合わせで議論する」と述べ、税制全体の見直し議論の中で、検証を進める考えを示した。
--20日の経済財政諮問会議で、民間議員が現在35・64%の法人実効税率をアジア水準並み(25%程度)まで下げるよう提言した
「税制は財源を調達するための手段だ。法人実効税率の引き下げという一つのことを変えれば、世の中すべてがうまくいくという魔法の杖(つえ)ではない。税制全般を取り上げて中長期的な全体像を議論する政府税調では法人実効税率という単一要素だけを取り上げて議論することにはならない」
--法人実効税率を下げれば、企業収益が高まり日本企業の国際競争力が強化されるとの指摘もある
「そういう声があるのは理解している。ただ、法人税で難しいのは企業の税負担の段階と、企業から配当などを受け取る個人段階に課せられる税負担の両方を見ないと全体の議論ができないことだ。日本の場合、企業の法人税負担が重い半面、配当や株式譲渡益にかかる個人の税負担は世界的に比べて高くない。社会全体でのトータルの負担がどうなのかという視点も踏まえて考えないといけない」
--政府税調では法人税の見直しの議論をどのように進めるのか
「消費税や所得税など他の税金との組み合わせなどを含めて、どうすれば国内経済が発展し、財政状況の悪化が防げるかを総合的に検討する。必要であれば法人税を集中的に議論するグループを立ち上げたい」