日本の国・地方を合わせた法人税の実効税率は、東京都で現在38.01%。みずほ総合研究所の試算によれば、税率をドイツ並みの29.55%まで下げれば企業の税負担が減り、10年間累計で4兆円の設備投資の押し上げ効果になるという。新たな工場や設備ができれば、生産が増えて、雇用も創出されるという経済の好循環が生まれる。結果的に税収増につながる経路は確かに想定できる。
実際、引き下げが税収増につながった先例がある。欧州だ。主要15カ国の法人実効税率(平均)は1998年の36.9%から2007年に28.7%まで引き下げられた。減税すれば税収も減少するのが本来の姿だが、名目国内総生産(GDP)に占める法人税収の比率は2.9%から3.2%に上昇した。この現象は「法人税のパラドックス(矛盾)」と呼ばれ、安倍首相も強い関心を示している。
しかし、ことはそう簡単ではない。逆の事例もあるからだ。1980年代、米国のレーガン政権は法人税率引き下げによる景気浮揚効果で税収増を狙った。だが、蓋を開けてみれば、税率引き下げが税収不足を招いたことで財政赤字に転落。貿易との「双子の赤字」のジレンマを抱え、長く経済の足を引っ張った。