高さ22メートルの防潮堤の建設が進む中部電力浜岡原発。安全対策の総額は3000億円におよぶ=静岡県御前崎市(同社提供)【拡大】
昨秋の臨時国会で成立した改正電気事業法には、電力大手による地域独占体制を見直し、平成28年をめどに電力小売りを全面的に自由化することが盛り込まれている。これに伴い、総括原価方式は経過措置期間を経て廃止される見通しだ。だが、電力業界からは「総括原価方式が撤廃されることで資金回収のめどが立ちにくくなり、本来は必要な大型投資に二の足を踏むケースが出かねない」との声が上がる。
とりわけ原発は1基当たりの建設費が約4000億円と高額。今後、安全性と効率性を高めるために、老朽原発を最新鋭原発に建て替えることも想定されるが、総括原価方式が廃止されれば投資費用の回収が難しくなる。電力各社は現在、新規制基準への対応で安全対策に取り組んでいるが、こうした対策費用の回収も容易ではなくなる。
21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹は「電力システム改革により、原発をエネルギー安全保障を担う『公益電源』として政策支援の対象にするか、火力発電などと同様でコストを競い合う『競争電源』として位置づけるか、政府は明確にする必要がある。原発を活用するならば、財政的な支援策について検討することが欠かせない」と指摘する。
政府が4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、電力改革後の原発が抱える課題について「海外の事例も参考にしつつ、事業環境のあり方について検討を行う」としているが、具体的な方策については触れられていない。経産省幹部は「原発の競争環境が厳しくなるから資金支援するというのは、自由化の理念と相いれない部分がある」との見方を示す。
ただ、電力の安定供給はシステム改革を行う上での大前提であることは言うまでもない。自由化後も安定供給に支障が出ないようにするにはどうすべきか、政府には慎重な制度設計が求められている。