原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理ら2人を交代させる政府の人事案が示された。「原発に過剰な安全を求めている」と島崎氏の交代を求めてきた政財界には歓迎ムードが漂う。市場でも「再稼働へ向けて安全審査が進む」との見方が広がり始めた。
「やや独善的だった」
自民党の滝波宏文参院議員(福井県選出)は、規制委の安全審査をこう批判する。実際、審査会合では、島崎氏がハードルをどんどん上げ、「電力各社の反論には聞く耳を持たない」(関係者)という場面が目立った。
電力各社は「基準地震動」(想定する最大限の揺れ)を厳しく見直すよう迫られた結果、追加工事が膨らみ、再稼働は見通せなくなっている。五月雨式に問題点を突きつける島崎氏に対して、大手電力幹部は「後出しじゃんけん」と揶揄(やゆ)し、近畿大原子力研究所の伊藤哲夫所長も「重箱の隅をつついている。再稼働させないための時間稼ぎとみられても仕方がない」と批判する。
ただ、専門分野の異なる各委員は単独で最終判断しなければならず、特に委員で唯一の地震学者である島崎氏は「事実上、安全判断の全責任を負わされていた」と地方電力の幹部も同情する。