国から委任・委託を受け公的年金事業の運営業務を担う日本年金機構の本部=東京都杉並区【拡大】
もちろん、過払い分が残っていれば、返還するのは当然。例えば、上記の視聴者のケースでは、「給付金が多すぎる」と自覚があり、手元に240万円が残っていれば、それは返還するのが筋論だ。しかし、既に手元にない場合、返還するだけの蓄えがない場合でも、返還請求が行われていることについては、よく考えてみる必要がある。
◆根拠は民法703条
返還請求を行う根拠は、「不当利得の返還義務」を定めている下記の民法703条である。「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」。
過払い分は過去の全期間に遡(さかのぼ)って返還請求されるわけではなく、時効が成立していない5年分。これは、下記の会計法30条が根拠だ。「金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、5年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする」。
つまり、上述の視聴者は、過去5年分の時効が成立していない過払い分240万円を、民法703条に基づいて突然返還請求されたということだ。人ごとではない。あなたが当事者になった場合、どのように考え、どのように行動するだろうか。
ちなみに、年金給付関係の事務ミス1079件のうち、未払い事案が539件(総額5.5億円、平均額103.3万円)、過払い事案が241件(総額2.3億円、平均額99.4万円)。繰り返しになるが、返還するだけの蓄えが十分にある場合には、当然返還すべきもの。しかし、既に手元にない場合、蓄えがない場合、どうするのだろうか。