国から委任・委託を受け公的年金事業の運営業務を担う日本年金機構の本部=東京都杉並区【拡大】
さらに、国民年金法24条には「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない」とも定められている。これらを総合すると、今回の視聴者のような場合、仮に過払い金が既に存在しないとすれば、保険給付の差し押さえや内払い調整は行われるべきではない。もちろん、繰り返しになるが、もらい過ぎの自覚があり、過払い分が残っていれば、返還するのが筋であることは再度念押ししておく。日本年金機構には大いに反省して正確な事務を行うことを求めたいと思うが、年金制度は複雑で難解。事務ミスは一定の確率で発生するだろう。
制度そのものを簡素で理解しやすいものに抜本改革する必要性はますます高まっている。楽観的な年金財政検証結果を流布して、制度改革論に蓋をすることは許されない。
また、過失や不注意で発生した事務ミスで年金財源を毀損(きそん)する場合に備えて、職員給与の一定割合(例えば0.01%)を損失引当金として共同で積み立てるなどの努力も必要だろう。そうでなければ、国民の納得が得られない。
日本年金機構のみならず、行政のさまざまな過失責任に備えて、議員などを含む公務員全体でそうした制度を構築するのも一案だ。もちろん、重大過失を犯した当事者は何らかの責任をとるべきである。
しかし、最も不条理なのは、年金制度の不備や過去の重大な事務ミスに責任のある政治家、幹部官僚、職員は、既にリタイアし、悠々自適の生活を送っていたり、死亡している。現在の関係者だけを責めるのは少々酷かもしれない。この不条理は、耐え難く、かつ解決し難い不条理である。
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