【日本の針路 大塚耕平のスピークアウト】年金過払い返還請求の再検討を (3/6ページ)

2014.6.12 05:00

国から委任・委託を受け公的年金事業の運営業務を担う日本年金機構の本部=東京都杉並区

国から委任・委託を受け公的年金事業の運営業務を担う日本年金機構の本部=東京都杉並区【拡大】

 そこで、返還請求の根拠となっている民法703条について、深く考えてみる必要がある。まず、「法律上の原因なく」というくだりは「法律上の根拠なく」という意味であり、事務ミスによって法律に定めた金額以上の給付を受けてしまうこともこれに該当する。この点は理解できるが、ここから先に2つの重大な論点がある。

 ひとつは、「他人の財産又は労務によって利益を受け、他人に損失を及ぼした」というくだりの「他人」の定義だ。現在の考え方は、この「他人」は「年金制度に加入している他の人」であり、過払いによって「他の人に迷惑をかけ、不公平だ」という解釈である。過払いを受けた「本人」とそれ以外の年金加入者である「他人」の間には、何の接触もつながりもない。「本人」と「他人」の間に介在するのは、事務ミスを犯した日本年金機構。ところが、日本年金機構はどこにも登場しない。

 過払い分の返還請求権は、国つまり日本年金機構が保有・行使するものであり、日常的な感覚では、この場合の「他人」とは日本年金機構であると思うのが普通ではないか。しかし、国つまり日本年金機構は国民の代理人であり、法律的な返還請求権は「他人」たる「本人」以外の年金制度加入者。こう考えるからこそ、民法703条を根拠としている。つまり、「他人」の定義が、日常的な感覚と、法律的な解釈で異なるということだが、日本年金機構の事務ミスが不問に付されるというのは合点がいかない。

 もうひとつの論点は、「その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」というくだりの「その利益の存する限度において」の解釈。例えば、既に過払い分を使ってしまい、相当分の貯蓄もない場合、どうするのだろうか。過払いを受けていた夫が死亡した際には、相続人である妻や子供にも返還請求が及ぶ。しかし、夫の相続財産がほとんどない場合、どうするのだろうか。

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