三井不動産の「パークマンション三田綱町 ザ フォレスト」(東京都港区)。最多価格帯が3億円台という超高級物件にもかかわらず、7月の第1期販売時には80戸に対して110組の応募があった。住宅は消費税増税前の駆け込み購入が多かった分、増税後の反動も大きい。しかし、都心部にある高級マンションの販売は軒並み好調を持続。地価を押し上げる原動力となっている。
地価変動率がプラスに転じた東京圏住宅地の動向を読み解くもう一つのキーワードが再開発だ。
野村不動産が東京・立川で販売しているマンション「プラウドタワー立川」(東京都立川市、販売戸数292)は、再開発工事が進むJR立川駅に直結する物件で利便性に対する評価が高い。坪(3・3平方メートル)単価は平均で342万円と東京・多摩地区の平均相場を4割近く上回るにもかかわらず、先行して売り出した250戸は完売した。主要顧客は医者を中心とした地元の富裕層だ。
東京五輪の選手村が建設される予定の東京都中央区晴海地区周辺では、タワーマンションの開発ラッシュが続いている。五輪までに新たな公共交通機関が整備され再開発が進むとの期待もあり、売れ行きも好調。その波及効果によって近隣の月島の基準地価は前年より10・8%上昇と、東京圏で最も高い伸び率だった。
景況感の改善で先高感が強まる東京圏の住宅地。マンション用地に適した土地をめぐっては「現段階で高く売れるのであれば売却する。そうでなければ先延ばしにする」といった態度で交渉に臨む所有者が増えている。
こうした中、デベロッパーの土地仕入れ担当者は「エリアによっては現在の地価がピークになるかもしれない」と、地価動向には不透明感が漂うと指摘する。その要因の一つが「いばらの道が続く」(木村恵司・不動産協会理事長)という建築コストの高騰だ。東京五輪対応の旺盛な需要で人手不足の問題が深刻化。過去2年で建設コストは15~20%上昇したとの見方がある。その影響を強く受けるのが千葉や埼玉などの郊外型マンションだ。