【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(20) (2/3ページ)

2014.10.10 05:00

中国からのF1ハイブリッド種子で作られた西瓜。ラグビーボールのような形で、日本の西瓜よりかなり大きい=ミャンマー・チャウセー郡(筆者撮影)

中国からのF1ハイブリッド種子で作られた西瓜。ラグビーボールのような形で、日本の西瓜よりかなり大きい=ミャンマー・チャウセー郡(筆者撮影)【拡大】

 この5カ月間だけの地代が1エーカー当たり20万~25万チャット(約2万1900~2万7400円)である。仮に貸し出さないで稲を作付けたとしたら純収入は10万チャットほどであるため、持ち主としても悪い話ではない。西瓜栽培に向いているのは砂地なので保水力が弱く、もともと稲作には向かない土地でもある。

 種子はすべて中国のF1ハイブリッド種で、1エーカー当たり5万チャットほど費用がかかる。他に農作業者の日当が2000~2500チャットで労働コストが70万チャット、肥料代が25万チャットなどで、1エーカー当たり生産費はおよそ200万チャットである。45万~50万チャットの稲作の4倍ほどかかることになる。

 収穫した西瓜はすべて中国に輸出する。昨年度は1エーカー当たり17トン穫れ、1キログラム当たり平均750チャットで売れた。1エーカーで1275万チャットの粗利益である。これから地代と生産費を除いても、1050万チャットすなわち約115万円の純収益となる。収入は稲作とは比較にならず、仮に豆類やトマトを作っても、この収入の足元にも及ばないであろう。

 これが2000エーカーもあるのだから、マウンジー氏はとてつもない大金持ちであり、周辺の農民や土地なし層を労働者として大量に雇用しているので、村人の収入も向上させていることになる。これもすべて中国がもたらした有効需要のおかげである。

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