安倍晋三首相の施政方針演説など政府4演説では、成長戦略の速やかな実行と岩盤規制の改革、財政健全化目標の実現などに強い決意が示され、経済再生と財政再建の両立というアベノミクスの方針が改めて確認された。ただ、成長戦略の推進はまだ緒に就いたばかりで、財政健全化目標の達成にも高いハードルが待ち構えている。
「オープンな世界へと果敢に踏み出す」。演説で安倍首相は、交渉が最終局面を迎えた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を引き合いに、政府が日本企業の国際競争力強化を後押しする姿勢を強調した。また2年間で3・29%の引き下げが決まった法人税減税の実績も念頭に、「成長を確かなものにする」と経済再生に意欲を見せた。
だが、演説の俎上に載せた経済政策は、達成が困難なものも少なくない。成長戦略で本丸と位置づけられる規制改革は、農協改革こそ一定の進展がみられる一方、医療や雇用の改革は道半ばだ。経済好循環に不可欠とされる賃上げも、流れが定着したとは言い難い。
財政再建も先が見通せない。12日に開かれた経済財政諮問会議で提出された内閣府の中長期試算では、国内総生産(GDP)の成長率が名目3%以上、消費税率は29年4月に10%に引き上げられるという楽観的な想定にもかかわらず、32年度における国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標は達成困難との見通しが示された。
アベノミクスは昨年4月の消費税増税後、景気回復に足踏みがみられるなど、デフレ脱却を果たせるかの正念場を迎えている。「要はやるか、やらないか」。安倍首相の強烈なハッパが、日本経済の切迫した現状を映し出している。(佐久間修志)