開けっぱなしの旅
さらに次の益山駅に停車した際には扉を無理やり閉め、ガムテープを貼って固定する応急措置を施したが、テープはその後、走行中に風圧ではがれ、再び扉はガツンガツン…。
ついに次の井邑駅では、扉を開けた状態でガムテープで固定。その後、列車は中の機械類がむき出しのまま走行し、終点の光州松亭駅に約17分遅れで到着した。扉が閉らなかった結果、KTX515便は300キロの最高速度を出せず、190キロ~230キロで減速運行したという。
また扉の内側にはウオッシャー(洗浄)液の注入口などがあるが、運行するKORAILの関係者は「扉が開いていても、注入口には蓋があるので液は出ない」と“安全性”を説明したという。
設計から間違い
この先頭車両の扉については設計ミスも指摘されている。扉のヒンジ=蝶番(ちょうつがい)=が進行方向から見て後ろ側についていたからだ。ヒンジを扉の前につけておけば、例え扉が開く状態になっても走行時の風圧で閉まり、そのまま走行できる。先頭車両が運行状況によって最後尾車両となる場合を考えるのなら、ヒンジを扉の上につけておけばいい。
ちなみにハッチのようなパネルの固定技術は国際的には70年以上前から確立している。第二次大戦時の戦闘機(時速500キロ以上)の場合、英国では回転式のファスナーが主に使われ、ドイツではボタンを押せばロックが解除されるとともに取手が飛び出すラッチが規格品として各メーカーに採用されている。
現代では極めて基礎的な工業製品なのに、故障で修理に出向いて部品交換さえできないのは前代未聞だ。