【シンガポール=吉村英輝】ロイター通信は8日、米国務省が近く公表する今年の「人身売買報告書」で、マレーシアの評価が最下位から引き上げられると伝えた。米国は最低評価国との通商協定締結を禁じており、両国が参加する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の障害除去へ追い風となる可能性がある。
昨年の同報告書はマレーシアについて、強制労働などへの対策が不十分とし、評価を4段階中最低の「第3階層」に引き下げた。今年は、犯罪件数が低下したとして3番目の「第2階層の監視対象」に戻す。
米国では、TPP交渉妥結に向け、通商交渉の権限を大統領に委ねる貿易促進権限(TPA)法が6月に成立した。だが、同法案には「第3階層」国との通商協定を禁じる「人身売買禁止条項」がある。
報告書の評価対象期間は今年3月までだが、マレーシアでは5月、人身売買組織の被害にあったミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ族らのものとみられる多くの墓穴が見つかるなどしている。このため、TPP交渉では引き続き、マレーシアの人身売買をめぐる状況が議論の対象になるとの見方もある。