政府は10日、月内に開かれる経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で示す中長期財政試算に、新たな借金をせずに政策経費を賄えるかを示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が平成32年度は「黒字」とする方針を固めた。2月の試算では32年度に約9兆4千億円のPB赤字が残るとされていたが、景気回復に伴う税収増を背景に、6月に財政健全化計画で示した32年度PB黒字化を反映させる。
2月の試算によると、27年度のPB赤字は16兆4千億円で、国内総生産(GDP)が実質2%、名目3%の伸びを続けたら32年度には9兆4千億円の赤字が残るとされていた。
財政健全化計画では30年度にPB赤字をGDP比で1%程度(27年度3・3%)に減らす中間目標を設定。中間目標時点で達成状況を評価し、計画が未達の場合は歳出・歳入両面で追加措置も検討、32年度のPB黒字化を目指すとした。
政府は、29年4月に予定している消費税率10%への引き上げを除き、国民負担の増加を極力抑制する方針を示し、税収増による財政の立て直しといった「成長重視」の姿勢を鮮明にしている。26年度の国の税収が消費税増税と景気回復の影響を受けて約2・2兆円上振れしたことも追い風となり、32年度のPB黒字化達成への道筋を立てた。
ただ、財務省は2・2兆円の上振れ要因のうち1兆円を一時的要因とみており、中長期試算に組み込まれるのは1・2兆円にとどまる見通しだ。