昨年10月末の追加緩和も当初は「無風」と思われていた。黒田総裁が直前の参院委員会で、「物価目標に向けた道筋は順調」と繰り返したからだ。市場は予想できず、結果的に大幅な円安・株高を招いた。
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅氏は7日のリポートで「一部の投資家は黒田総裁のシグナルを額面通りに受け取らず『今度こそだまされない』との姿勢で追加緩和を織り込んでいる」と分析した。
1年ぶりの追加緩和期待が盛り上がるのは、金融市場にリスクオフ(回避)ムードが広がっているという背景もある。
6月に2万0952円の年初来高値をつけた日経平均株価は今夏、米利上げを見据えた新興国からの資金流出懸念や中国景気不安を受けて急落。9月末には約8カ月半ぶりに1万7000円を割り込んだ。
ただ、ECBの追加緩和方針を受け、23日には円安・株高が進んだ。金融市場を盛り上げるため、追加緩和を求める日銀への圧力は増しているが、「物価高を招く追加緩和は家計や中小企業を苦しめ、政治的にネガティブだ」という声もささやかれる。
麻生太郎財務相は23日の閣議後記者会見で、「金融でできる範囲は限られている」と述べ、現時点で追加緩和の必要性は低いとの認識を示した。