ただ、こうした利便性の向上はサイバー攻撃のリスクと背中合わせだ。開会式の最中に新国立競技場の電力が落ちる。競技記録が書き換えられる。訪日客を輸送中の自動運転車が不審な挙動を起こす。さらには、首都圏の電力システムを乗っ取られ、交通や通信のインフラが麻痺(まひ)する…。
年金機構は氷山の一角
政府関係者は「あらゆる事態の可能性を想定して対策を進めなければならない」と危機感を隠さない。
物理的被害を伴うサイバーテロが顕在化するケースは、まだ多くはない。しかし、ひそかにシステムに潜伏して機密情報を盗み続けるサイバースパイは、現実に頻発している。125万件の個人情報が流出した日本年金機構への攻撃はその一例だ。
「年金情報は攻撃者の本来の目的ではなく、むしろ犯行が露見して『失敗した』と思っているはずだ。周辺から中枢に迫り、最終的には『安倍晋三首相の頭の中』を知ろうとしていた」。サイバーセキュリティーに詳しい慶応大の土屋大洋教授はそう話す。