一方、企業業績の好転でリストラに伴う土地放出が激減したこともあり、郊外でも「マンション開発に適した広い土地は高値で取引されている」(不動産会社の担当者)。東京・多摩地区の旧官舎跡地の入札は、周辺より約3割も高い価格で不動産開発会社が競り落とした。
こうした状況は前回の価格上昇局面の終盤に当たる2008年頃と酷似しており、手が届きにくくなってきた30~40代のファミリー層の購入意欲は鈍ってきた。前回はリーマン・ショックが契機となって価格が反落したが、「『同じような事態(価格調整)が再び訪れるはず』との危機感から、高値が予想される入札競争には参加しない事業者が顕著に増えてきた」(不動産会社)との指摘もある。
都心部についても、「シンガポールや香港、台北、上海に比べると割安感は大きい」との見方がある半面、年明け以降の円高や株安で投資マネーの流入が鈍る可能性もあり、マンション販売や地価動向の先行きは不透明感が拭えない。(伊藤俊祐)