会見する日銀の黒田東彦総裁=29日、東京都中央区(荻窪佳撮影)【拡大】
編集委員・田村秀男
黒田東彦(はるひこ)総裁の日銀はマイナス金利政策導入によって、白川方明(まさあき)前総裁時代の悪癖に決別し、異次元緩和制度を整えた。最大の意義はマンネリ化していた異次元金融緩和政策の再活性化にある。株式市場での当面の懸念である「甘利ショック」を吹き飛ばすばかりでなく、銀行の貸出金利の引き下げと融資の増加につなげるべきだ。
安倍晋三首相は首相就任前に、マイナス金利導入を求めたことがあるが、日銀は動かなかった。マイナス金利とは、カネを預ける側が金利を払うわけだから、一見すると金融常識に反している。
「アベコベノミクス」と揶揄(やゆ)する向きがいるかもしれないが、物価が下がり続けるデフレが経済活動を倒錯させている。金利を逆さまにすることは劇薬だが、理にかなう。
黒田総裁の日銀が3年近く前に打ち出した異次元緩和政策は量の拡大が中心になっているが、白川時代の負の遺産も引き継いだ。金融機関が日銀に持つ当座預金の大半を占める「超過準備」へのプラス0.1%金利制度である。