黒田東彦日銀総裁は消費税を増税しても異次元緩和があり、景気は心配無用とし、安倍晋三首相に2年前に予定通りの消費税増税を実行させた。財務省は増税の実施に合わせて公共事業など財政支出を削減した。異次元緩和は最初の年こそ、20年間も下向いてきた日本経済というジャンボジェット機の機首をぐいと押し上げたのだが、巡航飛行に入る前に増税という逆噴射で大きく失速した。
日銀は今、異次元緩和で市中銀行に年間で80兆円の資金を注入しているが、政府は年間で約100兆円余り民間資金を吸い上げている。企業のほうは昨年末までの3年間で80兆円以上も内部留保を増やした。日本国内にカネがたまっても回るはずはなく、頼みはチャイナマネーにならざるをえない。
異次元緩和は日銀が2月に導入したマイナス金利政策で新たな次元に入った。住宅ローン金利はゼロ・コンマ台が出現した。企業の一部は金利負担なしで社債を発行できる。これらの好条件をどう生かすか。マイナス金利効果で国債相場は上がるのだが、中国による国債爆買いしか生まないなら意味がない。
勤労者家計が増税に身構える必要がなくなれば、安心して住宅ローン借り入れに向かう。内需が堅調になる環境があれば、企業が金利マイナスの預金を引き出し、新規事業に投資しない手はない。もし、安倍政権が予定通りの増税と緊縮財政に固執するなら、マイナス金利の威力は封じ込められる恐れが十分ある。
政府はマイナス金利分だけ発行益を得られる条件で国債を発行できるようになった。中長期的な経済成長に必要な教育、航空・宇宙や医療などの基礎研究に対してゼロ以下の金利負担で調達した資金を投入するのは理にかなう。
異次元緩和は安倍首相が消費税増税凍結を決断し、緊縮財政路線を転換すれば、フルに本領を発揮するだろう。それは今しかない。