
櫻井よしこ氏【拡大】
一方、日本では耐震強度のため原子炉容器は小型で堅固に、つまり、タンクの壁は相対的に厚くする。配管は曲げて熱膨張を吸収する。温度差に対して壁は薄く、地震には厚く。相反する二要素を同時に満たすのがループ型である。
日本の自然条件に基づいて設計されたもんじゅだが、20余年ほとんど稼働できずに今日に至る。もんじゅを横に置き、フランスの計画に乗ると仮定しよう。完成は早くても20年後であろう。その間、フランスから学ぶことがあるにせよ、日本の技術開発は止まると考えてよい。
世界はいま高速増殖炉の時代に向かっている。ロシアは出力88万キロワットのBN-800を昨年12月に、インドは50万キロワットの原型炉を今年、運転開始した。中国は北京郊外の実験炉を2014年にフル稼働させ、来年、実用炉を建設する。日本は劣位に落ちつつある。
20年後、フランスの技術導入を目指しても地震国特有の問題がつきまとう。そのとき結局、もんじゅのループ型高速増殖炉の技術開発に再び取り組まなければならないのではないか。これを単なる杞憂と退けられるだろうか。