
櫻井よしこ氏【拡大】
わが国が開発への参加を考慮中のフランスの高速増殖炉では、これまでに30回のナトリウム漏れを起こしている。しかし、彼らの対応は日本のそれとは全く違う。彼らは事故の度、原因を調べ対策を講じ、完成度を高めた。そしていま、日本はその実績に基づくフランスのアストリッド計画に学ぼうとしている。
なぜ、フランスにできることが日本にできないのか。たった一度のナトリウム漏れで15年間も運転をとめるという非科学的な姿勢を脱し切れないからだ。実験炉だからこそ事故や問題は当然で、問題を乗り越え、知見を深め、技術を完成に近づけるという考えが必要である。国の方針を導き出す政治の場こそ、正論を戦わす場ではないか。
もんじゅの基本設計が間違っているとの指摘は、私は寡聞にして知らない。逆にその基本設計は正しいと評価する声が専門家の間に少なくない。もんじゅは継続すべきなのである。日本はその技術の継承と発展を必要としているのである。
機構に替わって、もんじゅを引き受けるのは経済産業省しかないだろう。アメリカのエネルギー省のように原子力政策を一本化して、政府が強い意思と明確な方針を示すことなしには、長期エネルギー戦略は描けない。資源小国日本を支える技術分野で、中国の属国的地位に退かなくてよいように、もんじゅ継続によって高速増殖炉の技術開発を、政府指導で推進せよ。