26日に開幕した主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、タックスヘイブン(租税回避地)を使った課税逃れ対策で先進7カ国(G7)が強い姿勢で臨むことで一致した。G7首脳の合意は、課税逃れ対策の国際的な枠組みへ各国の参加を促すなど抜け穴封じの追い風になりそうだ。だが、実効性のある仕組みづくりには課題が残る。
租税回避地の節税実態を暴露した「パナマ文書」問題を受け、納税者の不公平性が増幅し、税制への信頼が揺らいでいる。安倍晋三首相は課税逃れ対策について「各国の足並みをそろえた着実な実施が重要だ」との決意を示した。
伊勢志摩サミットでは、実体のないペーパーカンパニーの実際の所有者を把握し、各国で共有する仕組みを強化することで合意した。名義貸しの裏に隠れている真の所有者も捕捉し課税する。金融活動作業部会(FATF)を中心に具体案を議論し、10月までに主要20カ国・地域(G20)に報告する。
G7首脳は経済協力開発機構(OECD)が推進する課税逃れ対策の重要性も確認した。金融口座情報を各国が自動的に交換しあう協定、多国籍企業に対する課税逃れ対策の共通ルール(BEPS)という枠組みは、ともに適用を間際に控えており強力な後押しになりそうだ。
だが、実効性を伴う仕組みを作るのは容易ではない。どの枠組みも強制力を持っておらず、過度な監視には企業の反発も強いからだ。
例えば、実質的所有者を特定する仕組みは、現在もFATFの勧告で約190カ国に適用されているはずだが、実際は「基準を満たしていない国が多い」(財務省)。こうした中で、さらに厳しい網をかける議論は難航が予想される。