サミットの布石である5月の安倍首相のイタリア、フランス、ドイツ歴訪後には、ある日本政府関係者は「欧州各国は日本との2国間会談では厳しい対中認識を共有するが、複数の国が同席する場ではとたんに消極的になる」と語っていた。欧州は覇権主義的な中国の手法を問題視しながらも、中国を刺激して経済的利益を損ねないよう及び腰になるというのだ。
別の政府関係者によると、5月4日の日独首脳会談では、メルケル首相は自身の地元にできた中国政府系の文化機関「孔子学院」について、安倍首相に「孔子について学ぶ施設ではなかった」との不満をあらわにした。メルケル氏は、南シナ海の軍事拠点化を進める中国のあり方について、こうも指摘したという。
「米国はもっと南シナ海で軍事的存在感を発揮すべきだ」
日本側は「ドイツの対中認識も変わりつつある」との意を強くした。ただ、同時に「とは言っても欧州各国は自分で中国と対峙することはやりたくない」(政府高官)と分析する。