このため今後、英国の欧州連合(EU)離脱問題などで1ドル=100円前後まで円高が加速すれば、日本も介入に踏み切るのではないかとの見方も根強い。
しかし、米国としてもドル高は輸出企業にマイナス。大統領選を控え、対外的に強い姿勢で臨まざるを得ない事情もある。日米当局のさや当てが再燃する可能性が出てきた。
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1ドル=106円台後半まで急激に円高が進んだことに、国内企業は警戒感を強めている。
輸出関連企業では、1~3月の金融市場の混乱や、4月下旬からの急激な円高を受け、昨年が1ドル=120円前後であった実績に対し、今期はすでに105円前後と「保守的に設定している」(トヨタ自動車広報部)ケースが多い。
さらに円高が進むと、1円あたりでトヨタは400億円、三菱電機は20億円、新日鉄住金は10億~20億円の営業利益が吹き飛ぶ。
円高によって、自動車などの輸出関連企業の国内生産は鈍ることになる。鉄鋼や素材メーカーでは、製品の供給が減少し、「間接的に悪影響が出る」(神戸製鋼所の梅原尚人副社長)懸念も出ている。
1ドル=1円の円高で、営業利益が7億円減少する海運大手の日本郵船は、同110円としている今期の想定レートに対し、すでに「見直しも視野に入れる」(広報)という状況だ。
逆に、円高のメリットを受けるのが、電力業界だ。原子力発電所が全面停止している東京電力ホールディングスは、1円の円高で燃料費を年間で120億円削減できる計算になる。
ただ、国内の個人消費の回復遅れが指摘される中、輸出が悪化すれば、企業業績の下押し圧力となる。それが、消費マインドをさらに冷えこませることにつながる。日本経済全体でいけば、円高は大きな景気悪化要因になるのだ。