【ユーロ経済学】英EU離脱交渉 “先例”はスイス 移民抑制、市場アクセス切り離し狙う (3/3ページ)

 期限は来年2月

 英国とEUのはざまで苦しいのはスイスだ。国民投票の結果は3年以内に立法化して対処する必要があり、その期限は来年2月に迫るが、英国離脱を受けてEUの交渉態度は厳しさを増す。EUはさらに加盟国出身者が雇用で差別された場合などに備え、EU側の司法判断受け入れを求めているとされる。

 もともとスイス政府は移民受け入れ上限を目指したが、議会側が緊急時に国内雇用を優先する妥協策を提案した経緯がある。下院は10月に可決し、12月に上院で審議される予定だが、国民の理解が得られるかは予断を許さない。

 「合法的な発議を完全に履行し、EUとも一致できる合意を見いだすことは不可能」。下院の審議後、閣僚の一人はEUの要請と国民投票の結果の両立は困難との認識を示した。だが、国民投票を主導した最大政党の右派、国民党はスイスが重視する「直接民主主義が葬り去られた」と批判。2度目の国民投票も辞さない構えを示している。(ベルリン 宮下日出男)