【ユーロ経済学】英EU離脱交渉 “先例”はスイス 移民抑制、市場アクセス切り離し狙う (1/3ページ)

 メイ英首相が20、21日の欧州連合(EU)首脳会議で来年3月末までに離脱通告する方針を正式に伝えた。「単一市場アクセス」と「移民抑制」をめぐる駆け引きが今後、一層激しくなるのは必至だが、その「テストケース」とされるのが、EUと移民抑制策について交渉中のスイスだ。英国の交渉に影響する可能性もあり、英・EUは“場外”でも火花を散らしている。

 委員長も前向き

 「これなら可能だろう。正しい方向に向かっている」

 9月19日、EUのユンケル欧州委員長は訪問先のスイスでシュナイダーアマン大統領との会談後、こう語った。大統領は会談でEU出身者を含む移民の抑制策案を説明。ユンケル氏の言葉に、大統領は「解決ができると信じる」と難航中の交渉打開に向け期待をつないだ。

 交渉の発端は2014年2月の国民投票だ。多国籍企業を多く抱えるスイスは外国人労働力で経済が支えられている側面がある一方、人口約800万人の約4分の1を占めるまでに外国人が増え、「職を奪っている」などと移民への反発が強まっていた。投票では移民受け入れ上限導入の是非が問われ、導入支持が僅差ながら勝利した。

 EU非加盟のスイスはEUと個別協定を結ぶことで単一市場への大幅なアクセスを確保する一方、「人の移動の自由」の原則も農産品の関税撤廃などの協定とパッケージとして受け入れている。政府は投票の結果、この扱いを交渉する必要に迫られたが、EUは移民問題だけを取り上げることに反対し、スイスは苦境に陥った。

EUは単一市場へのアクセスは4つの「移動の自由」の原則受け入れとセットと主張