米大統領選の投票始まる 牛肉農家はTPP動向で焦り、日本市場席巻に危機感 (1/2ページ)

 民主党のクリントン候補(69)と共和党のトランプ候補(70)が争う米大統領選は各州で順次投票が開始、即日開票され、日本時間9日昼過ぎにも大勢判明の見通し。両党候補の指名争いが始まった今年2月から続く長い選挙戦は決着のときを迎える。大統領選では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が主要な論点の一つとなったが、雇用喪失などを理由にクリントン氏とトランプ氏の両候補がいずれも反対し、TPP発効に欠かせない議会承認のめどが立たない。発効の遅れに、日本への輸出を増やす好機と待ち望んでいた米国の牛肉生産農家は焦りを強める。「両候補とも嫌いだ」。産地から悲鳴が上がっている

豪州産牛肉、日本市場席巻に危機感

 「輸出増と大金をもたらしてくれるTPPだけが楽しみだ」。西部モンタナ州の南西寄りに位置するホワイトサルファースプリングズ。見渡す限りの大草原に放し飼いにした約500頭の牛をピックアップトラックで見回りながら、牛肉農家のボブ・ハンソンさん(69)がつぶやいた。モンタナは全米有数の牛肉産地だ。米国農業連合会は、TPPが発効すれば日本などへの輸出が伸び、モンタナの牛肉農家の収入は合計で年間2650万ドル(約28億円)も増えると試算する。

 ハンソンさんの育てた牛の一部は日本を含むアジア太平洋地域に輸出されているが、米国内では豚肉との競争も激しく、このところ販売価格は下落傾向にあるという。「次の大統領が就任する前の議会承認が最善だろう」。ハンソンさんは、大統領選後から現職のオバマ氏が退任するまでの短い期間に、わずかな望みをつなぐ。

米国の牛肉農家が危機感を強めるのは、日本市場を豪産が席巻しつつあるため