
グレン・S・フクシマ氏【拡大】
貿易と投資政策は、トランプ氏と共和党主流派の間で最も意見が異なる分野だ。例えば、雇用を海外に流出させた米国企業の商品に35%の関税を課すという脅しに対して、自由貿易を支持してきた共和党議員は反対だ。
メキシコへの生産拠点の移転を予定していた空調メーカーが、優遇税制を受け、インディアナ州での雇用維持のために一部の移転をやめると発表したが、共和党議員は、経済活動への政府の直接介入には特に批判的だ。
トランプ氏は、不公正な貿易や外国為替操作に関与する国からの輸入品に対して、以前は20%の関税を課すと脅し、最近では中国に対しては45%の数字を示した。日本が米国産牛肉に38.5%の関税を課しているので、同水準の関税を日本製自動車に課すべきだと述べている。
選挙運動中に、トランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)と環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が、外国に有利で米国の雇用と企業を破壊する「悲惨な」協定だと批判し、NAFTAの再交渉とTPPからの撤退を誓い、二国間協定の方が好ましいと述べてきた。彼の政府高官や政治家に対する不信感を考えると、米通商代表には、彼が「タフ・ネゴシエーター(強い交渉者)」と信じる実業家を選ぶだろう。
大幅減税、規制撤廃、政府機能の縮小は、所得と富の格差を拡大させる。また、彼の貿易・投資政策によって、選挙の第1の公約である雇用の回復を果たせるかも疑わしい。「米国を再び偉大にする」ことができなければ、彼は2020年の大統領選で、共和、民主両党からの強烈な挑戦に確実に直面するだろう。
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【プロフィル】グレン・S・フクシマ
GLEN・S・FUKUSHIMA 1949年生まれ。カリフォルニア州出身。85年から90年まで米通商代表部で日本部長など歴任。2012年からシンクタンク、米国先端政策研究所上級研究員。