
グレン・S・フクシマ氏【拡大】
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□米マンスフィールド財団理事長 フランク・ジャヌージ氏
■外交、単独主義の恐れ
オバマ米大統領のアジア回帰政策、いわゆる「リバランス」は、いくつかの主要目的を達成した。太平洋の軍事力を向上させ、日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定した。また日米韓関係を安定化させ、東南アジアとは海上の安全保障協力を増進した。韓国との自由貿易協定(FTA)を履行し、ミャンマーとの関係を正常化した。
広島訪問では、政権の中心テーマである「核兵器のない世界の追求」を強調した。国家安全保障会議(NSC)でアジア上級部長も務めたジェフリー・ベーダー氏が指摘するように、アジア重視戦略は「ぎっしりと中身の詰まった」ものだった。
その半面、オバマ氏がやり残したのは、相互信頼に基づく米中関係の構築や、北朝鮮の核開発への野望を抑制することだ。
次はドナルド・トランプ氏が「打席」に入る。野球に例えれば、「走者」を返すため、忍耐強く「ストライク」を待てるのか、「打席」でよろめくのか。予測は難しい。トランプ氏は外交問題では新人だ。「マイナーリーグ」にいたこともなければ、彼の「チームメート」もよく分からない。
だが、選挙戦中の言動からヒントが得られる。トランプ氏は「米国第一」を掲げ、安全保障面では同盟国の負担増大を求めた。米国が保証する安全保障に不満なら、日韓は核保有を考えればいいと示唆した。ただ同盟国に無理を強いても、多くは得られないだろう。
経済政策では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの脱退を表明し、10年以上の議論を無にするようだ。TPPの消滅で、ルール作りにおける米国の力はそがれる。米国抜きの再交渉もあり得るが、合意の見通しは低く、むしろ中国が米国の後退につけ込むだろう。