トランプ氏はシェール開発規制の緩和などを通じて国内の化石燃料資源を最大限に活用する方針だ。そのため、クリーンパワー・プランを廃止し、米国が温暖化対策に投じる予算を1000億ドル削減するとも発言している。こうした政策は与党・共和党の基本方針とも合致しており、プルイット氏のもと、温暖化対策と対立するエネルギー政策が進められる可能性が高い。
米国の暴走は、今回初めて排出削減を義務付けられた途上国にも“宿題”をさぼる口実を与える。パリ協定は発効直後からその実効性が揺らぐことになった。
存在感増す中国
米国の混乱をよそに、でっちあげの犯人と名指しされた中国は平静だ。「米経済にも有益だと米国自身が気付いた方がいい。温暖化対策に前向きになるべきだ」(劉振民外務次官)とトランプ氏をいさめる。
中国が前向きな姿勢を崩さないのは、「2030年に排出量をピークアウト」という自国の目標が容易に達成できるうえ、優等生でいたほうが拡大するさまざまな温暖化ビジネスで主導権を握れるとの思惑がありそうだ。必ずしも国際協調に熱心なわけではない。