高齢ドライバーによる重大事故が相次ぐ中、75歳以上の運転免許保有者に対し、認知機能検査を強化する改正道交法が3月12日に施行される。3年ごとの免許更新時に受ける検査で「認知症の恐れ」と判断されると、医師による診断を義務化。逆走など18項目の違反を犯した場合にも自動的に臨時検査が課せられる。
2025年には「団塊の世代」が75歳以上となり、高齢ドライバーの大幅増も予想されている。検査強化で、大事故につながる恐れがある症状の進行を早期に把握し、被害を防ぐ狙いがある。
警察庁によると、15年に発生した75歳以上の死亡事故のうち、約3割はハンドルなどの操作ミスが原因だった。11~15年に起きたブレーキとアクセルの踏み間違えによる死亡事故も半数近くは75歳以上で、加齢による判断の遅れや記憶力の低下といった認知機能の衰えが事故の要因となっている実態がある。
現行の制度でも、75歳以上は3年ごとの免許更新時に認知機能検査を受けている。しかし、認知症の恐れがある「第1分類」との結果が出ても、一定の違反をしなければ、医師の診断は必要ない。このため、次の検査までの間に著しく認知機能が低下しても、車の運転を続けることになり、重大事故を起こす危険性が指摘されていた。
新制度では、第1分類の75歳以上は必ず医師の診察を受け、認知症と診断されれば免許の取り消しか、停止となる。逆走のほか、信号無視や一時不停止など重大事故につながる18項目の違反をした場合も、臨時検査が課せられる。15年に医師の診察を受けたのは4027人で、うち1472人が免許取り消しなどとなった。試算によると、新制度の導入後は約5万人が診察を受け、免許取り消しなどは約1万5000人で、いずれも10倍以上になると見込まれている。