カンボジア・デーリーは24年の歴史がある新聞だが、今年4月に営利企業として登録したことをきっかけに、税務当局から税金未納を指摘され、合計630万ドル(約6億8500万円)の支払いを求められた。カンボジア・デーリーは見解の相違があるとして金額の見直しを求めたが税務当局は応じず、9月4日、廃刊の道を選んだ。
フン・セン首相はカンボジア・デーリーについても「泥棒の親玉」など厳しい言葉で批判を繰り返しており、カンボジア・デーリー側は「交渉の余地がない」と判断したものとみられる。
フン・セン首相の親米派排除の背後には、深化する中国との関係が見える。南シナ海をめぐる問題で徹底的に中国の肩を持ち、「東南アジア諸国連合(ASEAN)内の中国の代理人」とまで言われるようになったカンボジアは、援助や投資だけでなく、軍事面でも、これまで続けてきた米軍との合同軍事演習を中止し、中国人民解放軍と実施するなど、両国の関係を深めている。たとえ欧米を中心とする国際社会で孤立しても、中国の援助があれば切り抜けられる、との判断があるのかもしれない。
内戦時代から30年余りもカンボジアを治めてきたフン・セン首相にとって、18年7月の国民議会選挙は、これまでにないほどの正念場となる。前回13年の救国党ショックから現在まで続いていたのは「野党支持」ではなく、「与党批判」であろう。反対勢力を強硬に排除するだけで足場を固められるとは思えない。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)