【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(49) (3/3ページ)

村の中を走る乗用トラクター。運転しているのは、件の水道料金徴収権を落札した大農アウンセイン氏の息子=2017年8月、マグエー郡カンターレー村(筆者撮影)
村の中を走る乗用トラクター。運転しているのは、件の水道料金徴収権を落札した大農アウンセイン氏の息子=2017年8月、マグエー郡カンターレー村(筆者撮影)【拡大】

 ◆村中に水道

 このような中、2011年に水委員会の委員長になったテーアウン氏らのリーダーシップにより、村中に水道管を張り巡らす計画が持ち上がった。委員会は村の全世帯から計460万チャット、さらにはヤンゴンに出稼ぎに出た、あるいは移住した村人から計150万チャットの寄付を集めて、16年に村中にポリ塩化ビニールの水道管を敷設した。これによって、週に1回だけではあるが、村の全世帯の庭先まで水が来るようになった。ただし、水道料金の徴収権は以前と同様、入札に付され、11年からずっと、村で有数の大農であるアウンセイン氏が落札している。井戸とポンプに加え、水道管の保守や水の配分も彼の義務となっている。17年の落札価格は75万チャットで、水委員会がこれを年利10%で村人に貸し付けて、機器の修理代金に充てる。

 23年前、村の輸送手段は牛車と自転車だけだった。オートバイは今やどこの村でも見られるが、大型乗用トラクターが村道を所狭しと走り回っているのには驚いた。13年以降急増し、この村だけでも19人のトラクター所有者がいる。耕運機も一時期導入されたが、畑の中でしばしば転倒するので、今は全く使われていない。ただし、農作物の生育中に条間を耕起し、除草や土壌の細砕を行う中耕には牛が欠かせないので、機械が完全に牛に代替したわけではない。それにしても、貧困だといわれているミャンマー乾燥地の農村で、2000万~4000万チャットもするトラクターが次々と導入されているのはなぜだろうか? 電化や水道敷設も含めて、次回はその背景を探ってみる。